大宮東口校 からのお知らせ:
英語の訳し方は様々 楽しんで触れてみよう
こんにちは、講師の佐々木です。
題材が少し古くて恐縮ですが、英語について話しますので、気分転換に読んでみてください。
言葉の多義性についてです。
2017年5月22日、アメリカの人気歌手アリアナグランデ(Ariana Grande)のコンサートでテロ行為が起きました。その時のアリアナ(Ariana)のツイートが一時、日本で物議を醸していました。皆さんの英語学習の助けになればと思い、今日はそれを紹介してみようと思います。まずは原文をご覧ください。
Ariana Grande
broken. from the bottom of my heart, i am so so sorry. i don't have words.
このツイートをNHKが報道したときの訳が以下の通りです。“i am so so sorry”の部分が「誤訳では?」と話題になりました。
「うちひしがれました。心の奥底から。本当に本当にごめんなさい。ことばが見つかりません」
ただテロ行為を受けただけのArianaに落ち度はありませんよね。したがってこの場合は、”I’m sorry”は「残念です。」と訳すのが自然だと学校で習います。しかし、このツイートについたリプライを見ると、「あながち間違いでもないのでは?」と思えてきます。どんなリプライがあったかというと、
“It’s not your
fault.” (あなたのせいじゃないですよ。)
という趣旨のものです。多くの(ネイティブとは限らない)英語話者が、Arianaの “i am so so sorry”を「謝罪」だとみなしました。”sorry”という語を辞書で調べてみると、
1 a) Used to tell someone that you wish you had not done something that has affected them badly, hurt them etc.
(ロングマン現代英英辞典より、b)以降は省略)
とあります。
1 a)を簡単に訳すと、「自分のした行為で、誰かに悪い影響を与えてしまったり、誰かを傷つけてしまったりしたことを悔いていることを相手に伝えるために使われる。」といったところでしょうか。日本語でいうと「ごめんなさい。」や「申し訳ありません。」に当たります。「残念です。」に当たるものは5番目にありました。
5 SAD/DISAPPOINTED
[not before noun] feeling sad about a situation, and wishing it were different. (ロングマン現代英英辞典より)
日本語に直すと、「(今の)状況を嘆き、こうじゃなかったら良かったのにと思う気持ち。」といったところでしょうか。ほかにもたくさんの語義がありましたが、この二つは「後悔の気持ち」を表すという点で共通しています。それが時には「謝罪」を表し、時には「遺憾の意」を表します。
このような語の多義性が言葉の曖昧さを生むのです。「日本語は曖昧な言語だ。」という人もいますが、自然言語である以上、何かしらの曖昧さを持っています。
さて、Arianaの本来の意図は我々には知る由もありません。事実として、1 a)の意味で解釈した人と5の意味で解釈した人がいることから、正解不正解はないということで結論付けたいと思います。
英語は語学です。1つの単語や表現にもさまざまな意味があります。
誰かの発言やセリフなどは、直訳するのではなく、背景を意識して、どのような意図で言ったのだろうと推測しながら訳していくと、色々な解釈ができて楽しいと思います。
[2021-01-23]